行政書士になろう


第一章 行政書士とは

1 行政書士という仕事

行政書士とは法律系の国家資格のひとつで、wikiでは次のように記しています。

行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格であり、
官公署に提出する書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、
提出手続きの代理または代行、作成に伴う相談などに応ずる専門職である。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、
官公署に提出する書類及び権利義務・事実証明に関する書類に関して、
法律に基づき作成、作成・提出を代理または代行し、
加えて当該書類作成に伴う相談に応ずることを業とする。

また、日本行政書士連合会のサイトでは次のように記しています。

行政書士が、官公署に提出する書類等を正確・迅速に作ることにより、
国民においてその生活上の諸権利・諸利益が守られ、又行政においても、
提出された書類が正確・明瞭に記載されていることにより、
効率的な処理が確保されるという公共的利益があることから、
行政書士制度の必要性は極めて高いと言われています。
業務は、依頼された通りの書類作成を行ういわゆる代書的業務から、
複雑多様なコンサルティングを含む許認可手続きの業務へと移行してきており、
高度情報通信社会における行政手続きの専門家として国民から大きく期待されています。

んなこたあない。
確かに行政書士は登録免許税額3万円の業務独占資格・名称独占資格であり、
厚生労働省の職業分類表における「他に分類されない専門的職業」です。
職務上請求が可能な、僅か8種の資格のひとつでもあります。
が、労働基準法第14条における「高度な専門知識を有する者」ではありませんし、
裁判外紛争解決手続(ADR)の代理権も付与されていません。
裁判所における補佐人としての出廷陳述権も認められていません。
できることは"書類作成の代行"と"書類作成の相談"、そして"提出の代行"だけ。
相手は"お役所"に限定され、裁判所や法務局、税務署等へ提出する書類に関わることはできません。
また、法律に関して相談を受けたり何らかの交渉を行うことは一切禁じられていますので、
たとえば、誰かの代理人となって交渉をすることもできないのです。
つまり、専門職ではあるけど高度な権限は与えられていない、ということです。

行政書士には「代書人」と呼ばれていた時代があります。
歴史は意外と古く、明治末期には既に職業として存在していました。
当時は試験もなく、申請すれば誰もがなれる職業のひとつでした。
字が読み書きできればよいわけですから。
識字率の低い時代のお話ですね。

転機となったのは大正8年。
司法代書人法が制定されると「司法代書人」と「司法代書人以外の代書人」とに明確に区分されました。
前者が今日の司法書士であり、後者が今日の行政書士です。
つまり「行政代書人」は法律上は存在していませんでした。
職業としては違法状態となり、代書人規則という内務省令で取締りの対象とされていたほど。
アングラというか、裏稼業のような形で存在していたわけです。

行政書士が法律上存在することとなるのは、昭和26年に行政書士法が施行されたことによります。
ここで初めて行政書士試験が実施されることになるわけですが、
当時はまだ国家資格ではなく、都道府県が所掌する公的資格に過ぎませんでした。
ゆえに試験のレベルも低く、試験科目に「作文」があるなど、
およそ法律家向けの試験と呼べるものでありませんでした。
合格率は昭和40年代で50-60%、昭和50年代で30-40%でした。
当時は「代書屋」と呼ばれ、その地位も決して高いものではありませんでした。

その行政書士を取り巻く環境が劇的に変化するのが昭和58年、
行政書士法の一部改正により国家試験となったことによります。
平成の時代となると合格率が10%前後で推移し、平成17年度に至っては2.62%!
数字の上では超難関試験のひとつとなってしまいました。
これには許認可書類の代理提出権が認められたこと、
許認可申請の聴聞・弁明の代理権が認められたこと、
そして、弁理士試験の科目免除対象資格となったことが大きく影響しているものと思われます。

ちなみに連合による政治献金は税理士会に次いで2位。
その額は弁護士会の2倍にもなります。
そのせいか権限は広がる一方ですが、しかし、職域は依然として裏街道です。

主な職域は、産廃、風俗、入管、車庫証明と、あまりきれいなフィールドではありません。
でも、ある方面からは大変に重宝される職業でもあるんですね。
たとえば特殊浴場の開業を企てるとしましょう。
その手続は複雑かつ煩雑です。
ひとりで処理しようものなら膨大な時間がかかってしまう。
そんな暇があったら1人でも多くの屈強な精神と肉体を持つ金に疎く尻の軽い女性を探したほうがいいわけです。
そこで行政書士の登場です。
店舗型性風俗特殊営業営業開始届出書、営業の方法を記載した書面、営業所の使用について権限を疎明する書類、
営業所の登記事項証明書、営業所の賃貸借契約書の写し又は使用承諾書、営業所の平面図、営業所周辺の略図、
営業者の住民票、営業者とは別に管理者(店長・支配人等)がいる場合は管理者の住民票、定款の写し(法人の場合)、
登記事項証明書の謄本(法人の場合)、役員の住民票(法人の場合)をパパっと揃え、管轄警察署の生活安全係に乗り込む。
これで10万円くらい請求できます。
サービス券がもらえたりするかも知れません。
でも、同じことを弁護士に依頼すると2倍以上のコストとなるでしょう。
つまり、低いコストで許認可申請をするには行政書士の存在が欠かせないということです。


2 行政書士取得のメリット

この資格がふつうの会社で役立つことはまずありません。
用があれば顧問の弁護士や税理士に頼みます。
士業と無縁の会社経営などまずないでしょう。
つまり行政書士を会社員として雇用する意味はないということです。
ですから就職活動の武器とはなりえません。

でも、開業しても食えません。
行政書士の専業で生計を維持しているのは全国でも数百人ではないでしょうか。
ほとんどの行政書士が上位資格との兼業です。
ですから行政書士だけで食っていくには相当な勇気と体力と預貯金が必要です。
アドベンチャーですね。

では、隣接資格との連携はどうか。
これがあるんです。
まず、前述した弁理士の科目免除の対象資格であること。
なんと、行政書士試験に合格し行政書士会に入会すると弁理士の選択科目が免除されるのです。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/benrishi_kamokumenjo.htm

どうです? ビックリでしょ?
行政書士はなんと、弁理士試験においては司法書士と同列に扱われるのです。
司法書士ですよ?司法書士。
その歴史を鑑みるとき、これほど痛快なことがあるでしょうか。

次に、この資格は社会保険労務士の受験資格のひとつとなっています。
高卒ですと社労士試験を受験できないわけですが、この資格があれば大丈夫。
大卒や他の国家資格ホルダー同様、社労士試験を受験することができます。

ちなみに社労士は労働基準法第14条における「高度な専門知識を有する者」です。
裁判外紛争解決手続(ADR)の代理権も付与されています。
また、裁判所における補佐人としての出廷陳述権が認められている数少ない資格です。
要するに、そんなに難しくないけど何故か多くの権限が付与されているお得な資格なのです。
その受験資格を得られるだけで、行政書士にトライする価値があるのではないでしょうか。

私?
私が行政書士を受験した理由は・・・
今はまだ秘密としておきましょう。


3 行政書士試験の現実

行政書士となる経路は3つあります。
列記しますね。

・行政書士試験に合格した者
・弁護士、弁理士、公認会計士、税理士となる資格を有する者
・国、地方公共団体、独立行政法人において行政事務を担当した期間が通算して20年以上(中卒は17年以上)

こうして見ると試験合格が最も効率的であることが分かります。
市役所勤務20年でももらえますが、それって大卒なら44歳までもらえないってことですよね。
よく「いいよなーただでもらえるなんて」と言うひとがいますが、
行政事務を20年も担当したのなら行政書士くらいもらえて当然だと私は思います。
同様のシステムが司法書士や税理士にもありますが、それらもまたしかり。
経験に勝る知識などないということです。


4 行政書士試験の概要

ここでは試験の概要について記します。

【試験案内】
・7月の第一月曜日

【願書の配布時期】※WEB申込あり
・8月の第一月曜日から最後金曜日まで

【願書の配布場所】※WEB申込あり
・都道府県の行政書士会
・都道府県又は市町村の関連部署
・行政書士試験研究センター

【願書の入手方法】※WEB申込あり
・窓口又は郵送

【出願期間】
・郵送
    8月の第一月曜日から9月の第一金曜日まで(当日消印有効)
・WEB
    8月の第一月曜日から9月の第一火曜日まで(17時00分まで)

【提出書類】
・郵送
    受験願書一式
    顔写真1枚(縦4.5p/横3.5p)
    受験手数料(7000円/郵便振込)
・WEB
    テンプレ入力
    顔画像データ(BMP又はJPG形式)
    受験手数料(7000円/カード決済)

【試験日時】
・筆記試験 11月の第2日曜日(13時00分から16時00分の3時間)

【合否発表】
・合否発表
    1月の第4水曜日(午前9時に試験研究センター及びWEBサイトで受験番号を表示)
・合否通知
    同日に試験研究センターから圧着はがぎを郵送
・合格証書
    同1月下旬に試験研究センターから簡易書留で発想

【試験会場】
・47都道府県57会場

【出題内容】
・憲法
・民法(記述あり)
・行政法(記述あり)
・商法会社法
・基礎法学
・一般知識

【合格基準】
・行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が満点の50%以上である者
・行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が満点の40%以上である者
・試験全体の得点が満点の60%以上である者(※補正措置あり)

【実施状況(過去10年)】
・受験者数 50000〜70000人
・合格者数 3000〜 6000人
・合 格 率 4.79〜13.12%


5 さあ、挑戦しよう

さあ、どうでしょう。
その気になってきましたか?
ぶっちゃけこの試験はバカでは受かりません。
十分な準備が必要です。
過去がどうであれ、現在は立派な難関資格のひとつなのです。
でもだからといって上位資格、たとえば司法書士や社労士等とは比較になりません。
法律系国家資格の登竜門、と考えてもらっていいでしょう。

次頁ではその勉強法について説明します。
ぶっちゃけ、ありきたりです。
学校に通ったほうがいいに決まってますから。
私は独学でしたけど。


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